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寒椿
寒椿というと私は、一番寒い寒の時期に咲く『ヤブツバキ』のことと思っていました。要は、椿の品種でなく、寒の時期に咲く椿の俗称と思っていました。
ところが"寒椿"はれっきとした"品種"でした。

『寒椿』は、ツバキ科のツバキ属の園芸種の一つの品種なのです。ただし、ツバキの園芸種なのか、サザンカの園芸種なのかについては異論があるようです。というのは、ツバキの特性を持った寒椿とサザンカの特性を持った寒椿が混同しているので、ツバキの系統にいれるか、サザンカの系統にいれるか、に異論があるのです。

しかし、ツバキとサザンカの区別についても中間的なものがあるので、厳密に規定する意義は学者に任すことにしましょう。

この稿では、サザンカが咲き終わる頃から(12月後半)、小寒・大寒の最も寒く、ヤブツバキが咲く頃までに盛んに咲くもの寒椿としておきます。
厳密な定義ではなく、サザンカとヤブツバキの開花との間に1ヶ月ぐらいの花が咲かないブランクがあるのでこの間を埋めるためにサザンカとヤブツバキ(ユキツバキ)との交配によって作出されたのが、寒椿でしょう。そのため両方の特性の出方に差があるのでしょう。

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寒椿の特性として挙げられる次の点は、サザンカの特性に近いもののように思います。

1.12月から2月にかけて一斉に開花せずに、ランダムに長い期間咲き続ける。
2.いわゆる寒の時期によく咲くし、香が無い。
3.新枝、葉、子房に気がない物が多い。
4.雄しべは花弁に合着しているが、花弁は1枚づつ落ちる。
5.樹形もシシガシラのように横に這う(横張性)とシシガシラの実生種の勘次郎ように立 ち性のものがある。夫々を「這いカン」、「立ちカン」と呼んでいる。
 注、2と3、4の反対な特徴が、ツバキの特性です。

私が毎日散歩する公園の遊歩道沿いに数百本か千の単位の寒椿が植えてあり、歩道近くには「這いカン」、土手沿いと外周道路沿いには「立ちカン」を植えてあります。立ちカン区画には、サザンカの交互に配してあります。

 左は「立ちカン」、                 右は「這いカン」。
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花名は、寒椿、説明にはサザンカの園芸種と書かれています。一重咲き八重咲きがグループ別に植えられており、獅子咲きと千重咲きは見当たりません。
花は、1月中旬頃が最盛です。同じ一重咲でも、雄しべが貧弱なもの、ツバキのように丸くて多く花弁に合着しているものが入り乱れています。
今は、花が枯れ、雄しべは子房に枯れたまま残り、花弁は地面に落ちずに途中の葉に重なって付着しているのが目立ち、風情がなく、寂しく悲しい。中ほどで、今を盛りと咲いている花に比べて、、、。

花言葉は、謙譲、愛嬌です。

寒椿は、色鮮やかに、寒中に咲き誇る健気さに感銘を受けます。

次の句は寒椿を歌った句です。

     寒椿    箕のうずめたる   芭蕉道     森村誠一

森村誠一氏は、推理作家で、写真俳句やインターネット俳句を主宰しておられる。
森村さんの句を読むと、芭蕉の句に、「鶯の かさおとしたる 椿かな」を思い出します。

     赤椿   咲いても咲いても  一重かな

この句は、松岡悠風さん(1920年生、三重県)の句ですが、寒椿を読まれたものだろうと思います。


     火の気なき   家つんとして  冬椿      一茶

この一茶の句は、時代から寒椿はなかったので、ヤブツバキを歌ったものと思います。


   
by tjirocyo | 2012-02-01 11:01


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